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「桜井さん?」
トマトを箸で挟んだまま、フリーズ中の俺。
そのトマトを口に入れ、意を決して……どこから話すかな?
とにかく
「俺は佐藤と、付き合ってるつもりはないぞ!」
これからだ!
「本当ですか?」
パッと、洋子ちゃんの顔が明るくなった。
「俺の好きな女は、他にいる」
言葉にすると、とても恥ずかしい。
「だけど、離婚の原因はそれじゃないんだ」
俺は桜との出会い。
自分を変えた理由。
佐藤との過ち。
幸子と武田くん。
幸子の想いを尊重した、離婚だったのを説明した。
俺が話をしている間、洋子ちゃんはもっさもさと飯を食いながら、黙って聞いていた。
俺も、もっさもさと飯を食いながら話をしていたけど。
「桜井さん。私、佐藤を少し調べていいですか?」
少し考えた洋子ちゃんが、そんな言葉を言った。
いきなりこんな流れ、よくわからないぞ?
「調べてどうするんだ?」
洋子ちゃんは、今まで見たことがない……鬼の形相……は言い過ぎだが。
企むように、ニヤリと笑った。
「高志、私に秘密にしてるつもりだけど」
その目がギラッと光り、唐揚げが無惨に箸に貫かれた。
「あの女と………」
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