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――――――
「あの時はほんと、空が天使に見えたわ」
「でも、空くんが天使ってなんか似合っているかも」
生徒会室で、雛と織音はカップドリンクを手に昔話をしていた。
「あ、ねぇ雛。空くんて、いつから『ひなちん』なんて呼び方するようになったの?」
「知らないわよ。昔は呼び捨てだったのに、いつの間にか呼び方が変わってたのよ」
その時廊下から話し声が聞こえてきた。声の主は、空と蓮だ。
「だぁから! そんなもんは本人に言え!」
「だってぇ……」
二人はそのまま生徒会室に入ってきた。
空は雛の顔を見るなり半ベソをかいて雛にすがってくる。
「ひなちんー! 怒ったりしないよね」
「何が」
「濡れたってまた新しいの買ったら大丈夫だもんね?」
「だから何がっていってんでしょ!」
「ひなちんの教科書にオレンジジュースを、その、……」
「こぼしたのね? って、どうしたら私の教科書にかかるのよジュースがっ!」
「勉強しようとして、でも僕教科書なくして、ひなちんの借りればいっかぁ……ってヒィィ! ごめんなさいぃー!」
「ちょっと来な、空」
耳を捕まれたまま、空は雛に連れ去られていった。
「ハハ……いつから空くん、雛の尻に敷かれるようになったんだろう……?」
「多分、結構前から」
「空くん、雛の命の恩人なのに。ハハ、ハハ」
生徒会室に残された蓮と織音の二人は、ひきつった笑いを漏らさずにはいれなかった。
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