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部屋の中は熱気がこもってムンムンする。窓が開けられているのに、全く風が入ってこない。
織音の目の前には無理やりつけられた礼儀作法の先生。
最近やけに白髪が目立つようになってきたのに、声を張り上げビシビシとダメなところを指摘するのだからまだまだ現役の女性だ。
「歩く時はこのように足を上げすぎずに地面をすすーっと滑らせるのです……、あぁ姫さま、そんなに足をあげてしまってはいけませんっ」
「ぅう……こうか?」
足をあげすぎてはいけないというのなら、いっそのこと地面に足の裏をつけたまま滑ればいいじゃないか。
そう思って足を一歩前に出すと、長くて引きずっていた服の裾を踏んで思いきりこけてしまった。
「っ!」
「姫さま!」
「大丈夫」
すばやく起き上がって、凛は苦笑いをしてみせる。
そもそもこの服装が悪い。季節は夏だというのに、何重にも同じような質の布をどうして羽織らなければいけないのだという疑問が常に頭を駆け巡る。
(風が入ってこないと思うのは、きっとこの服のせいだ)
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