不幸な生物学者

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 男だけが持っていた衛星携帯でSOSを伝えたのはいいが、救助が来るまで自分が生きていられるかの自信はまるでない。この島の肉食獣はあの1頭だけではないのだ。 「痛っ!」  男の足に、不意に鋭い痛みが走った。ふくらはぎを見ると、ムカデとも蜘蛛ともつかない虫が喰いついた。 「……本来なら大発見と喜びたいところだがな」  男は喰いついた虫を足から引き剥がしながら、それを遠くへと放り投げる。  それから一つ息をつくと、後ろでガサガサと大きなものが動く音が聞こえた。
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