不幸な生物学者

6/13
前へ
/13ページ
次へ
 奴が来たか。  男は吐く息すら気どられぬ様、慎重に草を分け、標的を視界に捉えた。  唸りを上げる虎の化け物。おそらくこの機会を逃せば、他では決して出会うことはできない、まさに格好の研究対象だ。  学者として好奇心を掻き立てられぬわけではない。だが、そんな一期一会の巡り合わせなど、余計なお世話だった。  今はとにかく、逃げ延びることを考えなければ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加