不幸な生物学者

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 これが奴の狙いか。  死を覚悟した刹那の間に、男は状況を理解した。  獲物をいぶり出すための進化……一体どんな環境変化があの化け物を産んだのか。  男には死を目前にして知的好奇心が蘇っていた。  だが、それも無駄な足掻きか……。  男は覚悟を決めて目を閉じる。真っ暗になった瞼の裏に、強烈な光が照らされて次第に白い世界に覆われる。   「ギャオォォォォォォォン!」  化け物の悲鳴のような雄叫びが耳を劈く。  ああ、死の際とはこのような感覚なのか……。
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