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「…………」 ってか今更気づいたんだけど俺全身ずぶ濡れだった…。 水を含んだ服が体にべっとりと貼り付いて足下には水溜まりまで作っている。 さすがにこんな姿じゃ電車にも乗れやしない。 「んな恰好じゃ帰れねぇだろ…俺ん家近くだから風呂と服くらい貸してやる」 見かねた男がそう言ってくれて、俺はその言葉に甘える事にした。 「お前名前は?」 ぐしょ濡れの俺にバスタオルを渡しながら男が聞いてきた。 「あぁ俺、水瀬ユウリ。あんたは?」 「俺はダイチ。旭川ダイチ」 ダイチはニコリと笑うと右手を差し出した。 さっきまで俺を疑わしげに見てた表情とはうって変わったその親しげな笑顔に、一瞬胸がドキッとしてしまった。 俺もおずおずと右手を差し出すと、ダイチのでかい手にガシッと掴まれブンブンと振られた。 力…強ぇ… 「んじゃ行こうか。ちょっと寒いけど我慢な!」 ダイチが戸口を開くと、静かな波の音と冷たい潮風が入り込んできた。 辺りはすっかり夕暮れで、水平線の向こうに紅い夕陽が沈みかけている。 自分の住む街では見られない光景に寒さも忘れて見とれていた。 生きている… 終わりだと思っていた命を救われた。 やっぱりあの碧い瞳の人にお礼を言いたい。 こんなに綺麗な光景を俺にまた見せてくれた人に… 「ユウリ!!早くこいよ!!」 明日、この辺りを捜してみよう。 俺はそう思いながらダイチの後を追った。
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