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ありきたりな恋に、ありきたりな失恋に俺の心は完全に折られてしまった。
まさか自分がこんな風になってしまうとは、微塵も思っていなかった。
これが悲しい…って事なんだろうか?
いつもの俺なら、別にどうでもいいやと思えるのに。
未だに理解できない心境のせいか、涙の一粒も出やしない。
俺はよくわからない感情にため息をついた。
考えても仕方ない…。
事実、フラれたのは確かなんだしこれ以上自分を分析するのはムダな事だ。
「…帰ろう」
俺は独りボソッと呟くと、立ち上がった。
―と、いきなり強い潮風が吹いて俺の体がグラリと揺れた。
ヤバっ…!!
と思った時にはもう遅くて、俺の視界に水面が広がった。
近くで見たいとは思ったけど、飛び込みたいなんて思ってねぇよ!!
何て誰にツッコんでんのかわからないうちにザブンと音がして、冷たい水が俺の全身を包んだ。
春の海は冬の海より冷たいなんて誰かが言ってた…うん、確かに凍えるように水が冷たい。
一瞬で心臓や血管、筋肉までが縮んだような気がする。
厚着をしているせいか服が水を含みずっしりとしてきた。
おかげでうまく水をかけなくて、体がどんどん沈んでいく。
しかも突然の出来事にびっくりして、落ちた瞬間大量の海水を飲んでしまった。
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