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運動が苦手なコウはまず力が無く、握力も右が19、左が21しかない。
幸いコウは小柄なので持ち上げる役割にはならなかったが、上に乗るにも力はいるときはいるので、やはり力が無いのは組み体操にとって致命的だった。
「はい、次の技!」
体育の先生が男子生徒に叫んだ。コウは圭吾とペアだったので、コウの力の無さを圭吾がカバーしていた。
そのおかげでコウはあまりミスをせずにすんだが、圭吾の方はカバーをするのに大変で練習をする度に、ミスが増えてきていた。
中学の男子生徒だけの組み体操練習の休憩時間にコウは疲れきっていた圭吾のそばに座って話しかけた。
「圭吾、大丈夫?ごめん…。」
「なんでお前、謝ってんの?お前俺になんもしてないじゃん」
圭吾は不思議そうにコウ見て言った。
「だって組み体操練習で僕の力がなくて、それで圭吾が疲れてたから…」
「なあんだ、そんな事気にしてたのか。大丈夫や!全然疲れてないから、心配しないでじゃんじゃん頼ってな」
と、圭吾は明るくコウに言った。
休憩時間が終わり、組み体操の練習が始まった。
じゃんじゃん頼ってな。
その言葉にコウは更に悩まされてしまった。
こんな風に毎回悩まないといけないなら、もっと力がある体で生まれたかったと次第にコウは思い出してきた。
体育祭本番まであと1週間の金曜日の出来事だった。
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