コーヒーとミルク。

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僕は黒が全ての始まりだと言った。 「光り輝く太陽や恒星は、黒い、暗い宇宙じゃないと輝いては見えない。だから白は最初に黒がないと存在できないんだよ」 「……それだけ?」 僕が言い終えると、彼女は呆れていた。 「規模が大きすぎてかえって分かりにくいわ」 「結構いい例えだと思ったんだけどな」        カチャカチャと、彼女がコーヒーとミルクをかき混ぜる音を聴きながら、僕は新しい例えを探している。 すると、かき混ぜる手を止め、今度は彼女の方から話し出した。しかも自信あり気に。 「じゃあ、いいこと教えてあげるわ」 黒より白が強い理由。彼女は僕に言った。 「希望と絶望、どっちが黒で、どっちが白のイメージがある?」 考えるまでもない。当然、希望が白で、絶望が黒だ。僕がそう言えば、彼女は満足そうに頷いた。 「そうでしょう。『希望と絶望、どちらがいい?』って聞かれて『絶望』なんて答える人はほとんどいないでしょうし」 彼女はコーヒーを一口飲んで「苦いわね」と顔をしかめて、更にミルクを足した。コーヒーの黒さはどんどん薄くなっていく。
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