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「何か、こういうの好き」
「何が?」
「夜中のコンビニ」
ワクワクしちゃう。そう言って彼女は無邪気に微笑んだ。髪の毛が生乾きだった。ちゃんと乾かせって言っているのに。
間隔の開いた電灯だけが道路を、僕と彼女を照らす。
「じゃあ、これから毎日行く?」
僕がそう言うと彼女は頬を膨らませた。機嫌を損ねてしまったようだ。
「分かってないなぁ、こう言うのはたまに行くからいいのっ」
「……そうなのか?」
「毎日行ったら新鮮味なくなるし、お金だってなくなっちゃうでしょ?」
あぁ、なるほど。それは確かにそうだな。
僕は1人納得して、前を歩く彼女の背中を見ていた。
すると、突然立ち止まった彼女が振り向いて、僕に向けて手を伸ばしてきた。
「……財布?」
「違うよ」
「?」
「ホント、鈍いよねー。このままじゃ、私、暗闇に紛れてどこかに消えちゃうよ」
「? ……あぁ、繋ぎたい?」
「うん」
面倒くさい奴。でも嫌いじゃない。
彼女の小さな柔らかい手を握ると、嬉しそうに笑った。
「おっきいね、手」
「そりゃ、男だし。お前とは違って当たり前だろ?」
「そうだけど、この手好きだよ」
僕を好きって言えば良いのに。
そんなことを考えながらコンビニに向かった。
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