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「ことみ~、こっちにきなよ~!」
教室に入るなり、ユウコがはしゃぎながら私を呼んだ。
私はいつも通り、カバンから教科書やノートを取り出し、机にしまってから、はしゃぐユウコ達の輪に加わった。
「ねえねえことみ、隣のクラスの転校生知ってる?」
「転校生?知らない。」
「えーっ!知らないの?!」
すかさず今度はカナが私に向かってそう言った。
「知らないもんは知らないよ。その転校生がどうかしたの?」
するとその場にいるみんなが私を哀れむような目で見る。
「な、何よ!」
「ことみはホント男に疎いよね。彼氏とか欲しいと思わないの?」
ユウコが私の肩に手を置きながらそう言った。
「欲しいとは思うけど、特にいいなぁ~と思う人がいないから。」
「なんで~もったいない。ことみはちゃんとメイクすればかなりイケるのに。」
そう言ったカナは私から見ると化粧が厚すぎだと思う。
「とにかくさ!ことみ、今から転校生見に行くよ!」
ユウコはそう言うと私の左手を掴み、そしてほぼ同じタイミングでカナが私の右手を掴んで引きずられるような格好で私は教室から連れ出された。
廊下には同じ様な理由だと思われる女子グループが何組かいた。
その中をカナとユウコらが掻き分けながら進み、教室を覗いた後、2人とも笑顔で手招きする。
私は睨んでくる他の女子に頭を下げながらユウコ達が強引に用意した“特等席”に移動した。
「ほら、あそこで会話してる男子2人がいるでしょ?あの立っている方が転校生の有坂芯くん!」
ユウコはまさに“恋する乙女”の表情で私に教えてくれた。
私はその2人を見て微かに鼓動が早くなるのがわかった。
しかし、それと同時に『これは何かが違う』と感じた。
今日の授業が全て終わり帰宅準備をしていると、案の定ユウコ達がカラオケに誘ってきたが、私はそれを断り校門近くにさりげなく身を潜めた。
今、私の前方には2人の男子生徒が歩いている。
その内ひとりは今朝転校生と教室で話していた男子だ。
もうひとりはその男子ととても仲がいいらしく、終始笑い声を立てている。
20分くらい経っただろうか。
2人は手を振って別れた。
私はしばらく物陰に隠れていると、いきなり背後から声を掛けられ私は小さな悲鳴と共に立ち上がった。
「ずっと健二や俺をつけてたでしょ?」
そこにはあの男子生徒の友達がいた。
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