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私は蛇に睨まれたカエル状態で立ち尽くしていた。
「そんなフリーズされてても困るよ。君、うちの学校の子?俺は本宮聡。君は?」
「今田ことみ…」
「ふ~ん、ことみちゃんかぁ。で、俺たちをつけて何してたの?もしかして、追っかけ?」
私は首を横に振った。
「じゃあ、何してたの?」
「えっと…その…もうひとりの…」
「健二?」
「そう、健二くんにちょっと聞きたい事があって」
「なんだよ、それだったらもっと早くに声かけてよ。もう別れちゃったじゃん。今電話して戻ってきてもらおうか?」
「ううん、いい。そんな大した事じゃないから。」
「そっか。もしあれだったら、これからお茶でも飲みながら話しない?アイツの事色々知ってるぜ。中学から一緒だったから。」
私はごめんなさいと断ると、逃げるようにその場を立ち去った。
後ろから本宮聡が「彼氏はいるの?」と叫んでいたが、私はそれを無視した。
全身から冷や汗が流れてくる。
それは尾行がバレたとかいうものではなく、もっと違う事が理由に思えた。
そんな事を考えながら歩いていたので、また急に声をかけられた時、今度は気を失いそうなぐらい驚いた。
「君、尾行ヘタだね~」
目の前には、あの転校生・有坂芯がいた。
驚きと同時に彼の整いすぎる顔に一瞬見とれてしまう。
「あんな尾行じゃ、すぐに気付かれるよ。でも一体何をしてたんだい?」
私はどぎまぎしながら応える。
「ちょっと、健二くんに聞きたい事があって…」
「ことみちゃんは健二の知り合い?」
「いえ別に知り合いじゃないんですけど、ただ…」
「ただ?」
「うーん、こんな事言ったら変な人に思われるかもしれないですけど、あなたと健二くんが話しているのを見て、違和感を感じたんです。その事を健二くんに伝えなきゃと強く感じたんです。可笑しいですよね、私健二くんと話した事もないのに。」
「違和感ねぇ」
有坂芯はそう言うと、なぜか私に笑顔を向けてきた。
「ごめんなさい!なんか変な事言っちゃって!」
「いや、いいんだ。そういう直感を大切にした方がいいよ。今日は楽しい話が聞けて良かった。それじゃまたね。ことみちゃん。」
そう言って有坂芯は手を降り立ち去っていった。
私はどっと疲れを感じながら有坂芯とは逆の方向へ歩き出した。
…あれ?
なんで有坂芯は私の名前を知っているの?
冷たい汗が背中を流れるのを感じた。
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