【第1章 転校生】

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私は蛇に睨まれたカエル状態で立ち尽くしていた。 「そんなフリーズされてても困るよ。君、うちの学校の子?俺は本宮聡。君は?」 「今田ことみ…」 「ふ~ん、ことみちゃんかぁ。で、俺たちをつけて何してたの?もしかして、追っかけ?」 私は首を横に振った。 「じゃあ、何してたの?」 「えっと…その…もうひとりの…」 「健二?」 「そう、健二くんにちょっと聞きたい事があって」 「なんだよ、それだったらもっと早くに声かけてよ。もう別れちゃったじゃん。今電話して戻ってきてもらおうか?」 「ううん、いい。そんな大した事じゃないから。」 「そっか。もしあれだったら、これからお茶でも飲みながら話しない?アイツの事色々知ってるぜ。中学から一緒だったから。」 私はごめんなさいと断ると、逃げるようにその場を立ち去った。 後ろから本宮聡が「彼氏はいるの?」と叫んでいたが、私はそれを無視した。 全身から冷や汗が流れてくる。 それは尾行がバレたとかいうものではなく、もっと違う事が理由に思えた。 そんな事を考えながら歩いていたので、また急に声をかけられた時、今度は気を失いそうなぐらい驚いた。 「君、尾行ヘタだね~」 目の前には、あの転校生・有坂芯がいた。 驚きと同時に彼の整いすぎる顔に一瞬見とれてしまう。 「あんな尾行じゃ、すぐに気付かれるよ。でも一体何をしてたんだい?」 私はどぎまぎしながら応える。 「ちょっと、健二くんに聞きたい事があって…」 「ことみちゃんは健二の知り合い?」 「いえ別に知り合いじゃないんですけど、ただ…」 「ただ?」 「うーん、こんな事言ったら変な人に思われるかもしれないですけど、あなたと健二くんが話しているのを見て、違和感を感じたんです。その事を健二くんに伝えなきゃと強く感じたんです。可笑しいですよね、私健二くんと話した事もないのに。」 「違和感ねぇ」 有坂芯はそう言うと、なぜか私に笑顔を向けてきた。 「ごめんなさい!なんか変な事言っちゃって!」 「いや、いいんだ。そういう直感を大切にした方がいいよ。今日は楽しい話が聞けて良かった。それじゃまたね。ことみちゃん。」 そう言って有坂芯は手を降り立ち去っていった。 私はどっと疲れを感じながら有坂芯とは逆の方向へ歩き出した。 …あれ? なんで有坂芯は私の名前を知っているの? 冷たい汗が背中を流れるのを感じた。
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