0人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
【厳つい声】
「明日旅立ちだってのに、こんな夜風に吹かれてたら風邪引くぜ?」
【ハル】
「…ほっといてくれ。それに、俺はそんなやわじゃない」
【オヤジ】
「そうだったなぁ。お前が風邪引いた所なんて見たことねぇ。馬鹿は風邪を引かねぇとは、よく言ったもんだな!ははは!」
【ハル】
「………」
【オヤジ】
「まぁよ、お前が何で悩んでるかは知らねぇし、知りたくもねぇ。だがよ、1人で悩んでるより他人に話した方が楽になるって事もあるんだ。そりゃ俺は頼りねぇかもしれねぇがなぁ!はっはっは!」
【ハル】
「おやっさん…」
【オヤジ】
「風も強くなってきたな。そろそろ戻るか」
【ハル】
「…今はまだ話せない」
【オヤジ】
「んあ?」
【ハル】
「俺自身もまだ整理がついてないんだ」
道具屋のおやっさんは背中を向けたまま話しを聞いている。
【オヤジ】
「………」
【ハル】
「今は話せないけど、全部…俺のやるべき事が全て終わったら話すから!」
【オヤジ】
「ああそうかい」
【ハル】
「ごめん…」
【オヤジ】
「ハル!」
おやっさんの声に一瞬体がビクッとなった。
【オヤジ】
「お前の帰る場所はここだ!全て終わったらいつでも帰って来い!ただ途中で帰って来る事は許さん!」
【ハル】
「………」
【オヤジ】
「帰って来たら話しを聞いてやるから好きなだけ話せ。だからよ…絶対に生きて帰れ」
【ハル】
「聞いてやるって…」
【オヤジ】
「はっ!長話をし過ぎたな。じゃあな、風邪引くなよ」
【ハル】
「もう嫌ってくらい話してやるからな!覚悟しとけよ!」
【オヤジ】
「はっはっは!」
俺は豪快に笑いながら去って行くおやっさんに、頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!