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「何を、やってるの!」その様子に気付いた彼の母親が、注意する。
「あぶないわよ」
服をつかまれ、彼は引き戻される。ふくれっ面。
「だって、退屈なんだもん」
「わがままを言わないの。ちゃんと、ガイドさんの話を聞きなさい!」母親は彼から棒切れを取りあげた。
「それに、そんなことしたらここに住んでる人たちが迷惑するわ」
「はぁい」彼は不本意ながら、従う。
怒られてまでするほどのことではない。ただの、暇つぶし。
やがてガイドの長ったらしい説明は終わる。
彼を含めた乗客たちは、次の観光地へむかう。
「なんだ、これは!」地元の住民は驚きの声をあげる。
「昨日までは、こんなものなかったぞ」
もうひとりの住民が言う。
「なんの目的で、そしてなんの意味を込めてこんなもの描いたんだ!?」
彼等は話合い、あれやこれやと考える。
しかし、答えは出ない。ほとほと困り果てる。
これほど大掛りなことを意味もなくする者がいるとは、考えられない。
だから、とりあえず彼等はそれに名前を付けておく。
ーー[ナスカの地上絵]、と。
それが、巨大な宇宙人の子供の描いた暇つぶしのラクガキとは、つゆ知らず……。
【了】
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