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ここが正念場だ!と、浪人生の彼はそう思う。
なんせ、志望の大学を四年も連続で落ちているのだ。
おそらくは気力の面からいっても、今年が最後のチャンスに違いない。
彼は[合格]と記された手拭いを頭にキリリと結びなおし、机上の参考書に向きあった。
が、朝からずっと受験勉強に首っぴきで集中力が続かない。
壁の掛時計の針は午前一時。眠い。
自然と瞼は重くたれ下がってくるし、眼球は赤く充血している。
受験生、とくに浪人生は寸暇を惜しんで努力しなければならないというのにダウン寸前だ。
これではいけない。
彼は濃いめのブラック・コーヒーを作って、たてつづけに二杯飲み干した。
そして立ち上がり、走りだす。狭い部屋の中をグルグル、グルグル、走り回り続ける。
眠気覚ましのため。
しかし、やる気とは裏腹にますます意識はぼんやりとし始めた。
ベッドがおいでおいでと手招きしている。
彼に逆う力などありはしない。その上へ、ゆっくりと倒れ込んでいく……。
気が付いた時、外はもう明るかった。
窓からさす日差しが目に痛い。
遠くの方から聞こえてくるのは、昼の十二時を知らせる鐘の音なのだろう。
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