宇宙の要求

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「うむ。仕方あるまい。人類が、滅ぼされてしまう」 あの国の大統領が言う。 「奴らほどの力があれば無理ヤリにでも人をさらっていける。要求をしてきたのには、何か理由があるのでは。何度も繰り返したり、エスカレートしたりするとも限らない。一度きりで終わることだって考えられる。理不尽なことに、変わりはないが」 みなは、あれやこれやと意見を出し合う。 かりに宇宙人へ生け贄を差し出すとすれば、どこの国から人を選ぶのか。 みな、自分のところから出したくないのは当然。責任は、問われたくない。 国同士の力関係で弱いところから、というのも当然ダメ。 のちのち国際問題化して、大変なことになる。どのような大義名分も、通るわけがない。 「ならば各国から一人づつ」という案が出る。公平に。 これも、人選の壁にぶつかる。まさか国内においてクジ引きで決めることはできない。 合理的に考えれば未来ある者より、余命いくばくもない者の方がよかろう。生け贄には。 しかし、人倫にもとる行為。
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