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それは罪を犯した服役中の囚人も同じ。彼らにだって、人権はある。
死刑執行囚でさえ死ぬまでは人間。宇宙人の生け贄にするべき者ではない。
そんな法律など、どこにもない。
かくして、ほとんど何もまとまらないまま運命の三日目を迎える。
円盤からの機械音。ひびく声。
「残り二十四時間。光線の発射準備に入る」
空に浮かぶ円盤の丸い下部がいっせいに光り始めた。緑色。
あの国の基地が一瞬にして消え去った恐怖が、人々の中へよみがえる。
もはや助からないのか。このまま、死んでしまうのか。
泣き出す者、呆然自失とする者、神に祈る者。絶望の色が、濃くなっていく。
と、ひとりの者が円盤の下へ歩み出る。慈善活動をおこなっている聖職者。
彼女は言う。
「わたしを連れて行きなさい」
今まで円盤の様子を映していたテレビカメラがすべて、向けられる。
彼女は胸の前で手を握り合わせ、ひざまづいた。ためらいのない落ち着いた表情。
全世界へ、放送される。
立派なおこない。自分の身を犠牲にして、人々を救おうとしている。
なかなか出来ることでは、ない。
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