宇宙の要求

8/9
前へ
/9ページ
次へ
おびただしい数の円盤は雲の向こうへと消えてしまった。 狂喜する人々。抱き合い、肩を叩き合い、なかにはキスをする者も。 命が助かったと、涙が止まらない。 宇宙人は言っていた。「我々との別れ。永久に」 もう二度と、地球にはやってこないのだろう。そういうふうしか、解釈できない。 連れて行かれた者たちはどのような目に合うのか。 それは分からないし、知りようもない。 しかし、彼らに対し感謝の念で溢れている。彼らは、身を呈して人々を救ってくれた英雄なのだ。 立派な像と碑を作り、後世にその名を残していこう。 多くの人々がそう考えていた時、空がピカリと光った。 あっ、という間もない。発射された光が地球を緑色に包むと、そこにいた人々はみな死んでしまった。 円盤の中で宇宙人は言う。 「戦争ばかりしているあの星をそのままにしていたら、いずれ我々にも害が及んでいたことだろう。宇宙にまで憎しみを持ち込まれたら、困るのだ」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加