妄想日記

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私が吊り革につかまると 目の前に座る貴女が少し微笑んだ 見た事すらないはずなのに その自然な微笑み知り合いだろうかと考え始めた いや知らない 昔から物覚えは良いから 忘れるなんて事は無い 本当に知らない人だ ちらちらと見ていたのがばれたのか 貴女はじっと私を見る 少し上がった顎 見開かれた瞳 何か言いたげな口 窓から入る夕日の光が当たり何とも言えない輝きを貴女はしていた 「綺麗だ」 貴女はからかうように笑う私の心を読んだのか 言葉が口から出ていたのか、、、 そうだとしたら恥ずかしい 慌てて咳ばらいをしてごまかした 貴女をチラリと見た 目が合った また微笑む貴女 私もつられて笑う 貴女の隣が空いた ポンポンと座席をたたき 私に座るように促す 私は黙って従った 夕日に照らされた町がオレンジに光る 不意に私の肩に重さを感じた 貴女の寝息が静かに聞こえる がやがやとした電車の中で貴女の寝息だけが私に聞こえた 沢山の学生が入ってきた あんな時代があったのだと考えた もう50になる やっと半分来たのだ 貴女はいくつだろうか 娘ほどの年齢だろうか 不思議な人だ こんなおじさんに 貴女は微笑んだのだ 気がつくと 私は寝ていた 長年の習慣からか起きたのは最寄り駅だった 貴女はいなかった そして、、、 私の鞄も無くなっていた←
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