キスを下さい。

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話が咬み合ったのか、その内桜ちゃん達と楽しそうに話し始めた。 ポケットから蒼い携帯を取り出して操作する鎖介をじっと見つめる。 鎖介はそんな俺に気が付いて、桜ちゃんから雑誌を借りると俺に見せた。 「誰?」 2頁に渡り、大きく写し出された女の人に首を傾げる。 凄く綺麗で、女の子が騒ぐのも分かる気がした。 「誰って…渡雷鳴。昨日言っただろ?」 昨日? 暫く考えて、俺の頭の中に昨日の出来事が甦った。 街中で、鎖介がぶつかった時の女の人だ。 また、嫉妬に似た感情が沸き上がる。 「な?凄ぇ綺麗だろ?」 「…何所が?」 「スタイル良いし、凛とした所とか―――…」 ガタン!俺が立ち上がった拍子に椅子が大きな音を立てた。 そんな事も構わず鎖介は話を続ける。 「俺昨日渡雷鳴の出るドラマの予告ムービー見付けてさ。お前に見せてやろうと思って。」 「見たくないってば!!#」 俺は鎖介の携帯を叩き落とした。 一変として、教室に険悪な空気が流れる。 鎖介は桜ちゃんに雑誌を返して携帯を拾った。 「何すんだょ…?」 怒ったのか、鎖介が何時もより低い声で言った。 鎖介に負けない位、俺も鎖介を睨み付ける。 「渡渡って…そんなにこの人が好きなのかょ!?#」 「は?別に何回も言ってねぇし。お前が知らないっつーから教えてやってんだろ?#」 「余計なお世話だってばょ!大体、昨日ウィンクして貰っただけで浮かれ過ぎじゃねーのお前?気持ち悪いな。#」 「お前こそ何ムキになってんだょ?つか、昨日もこんなくだらねー事で怒ってたのか?莫迦じゃねぇの?」 くだらない…? 俺にとっては滅茶苦茶深刻な事だ。 昨日の分も合わせて、俺の我慢も切れた。 「最低…っ!!#」 パン、と渇いた音が響き鎖介が俺に叩かれた左頬を抑える。 鎖介に手を出した事はないし、鎖介も俺に手は出さない。 嘗てない、今迄とは桁が違う喧嘩が始まった。
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