出会いの空

2/5
前へ
/55ページ
次へ
二人が立ち去った直後、途方に暮れている空の耳に 「きゃあっ!」 「逃げろ!」 そして、複数の人間の叫び声が聞こえて来た。 空が驚き、二人が消えた方に目を凝らしていると… 突然、ガサガサっ!と草木を掻き分け、先程の少女が走ってきた。 何かに追われて、必死の形相で、左足から血を流している。 「君、ど、どうして…?」 「逃げてっっ!あなたまで巻き込まれ…」 その直後、藪から「矢」が飛んで来た。 「危ない!よけてぇっ!」 少女が叫ぶ。 矢は明らかに少女を狙いながら、 無数に飛んでくる。 少女は、素晴らしい反射神経の持ち主らしく、矢はなかなか当たらない。 それでも、藪の中から鎧を纏った兵士姿の男達が十数人現れた時、空はとっさに少女の近くに駆け寄った。 「巻き込まれる!離れてっ!」 「怪我をしてるじゃないか!?」 空は、少女の腰に手を伸ばすと、 「ごめん」 と小さく声を掛けて抱き抱えた。 「ええっ!無理っ!」 「でも、ほっとけない!」 自分でも無理だと気付いている。 でも、空は助けたかった。 少女は、信じられない位、軽かった。 まるで、何も持って居ないみたいに…。 (いける!) 足は速い。 逃げ切れる! 空は、全身の力をこめて、スタートダッシュした。 …筈だった。 だが、前に進む筈の体は、『宙』を飛んだ。 「え」 灌木を飛び越え、その先の叢まで、空は少女を抱いたまま着地した。 「なっ、なんだあいつはっ!」 「飛んだぞ?」 「妖術使いか!?」 兵士達が喚く。 少女を助けようと、自分の敵を片付けたサイラが、丁度それを目撃して、余りの事に一瞬言葉を失った。 しかしすぐに我に返って叫ぶ。 「シャミィを頼むっ!」 空は混乱しながらも、この少女の名前が「シャミィ」だと理解し、強く頷いた。 「掴まっていて、僕に」 優しく声を掛けて、再び、強く地面を蹴る! 体はまるで、重力を半分忘れたかの様に、高く高く舞い上がった。 それだけではなかった。 上に行かない様に、低姿勢で走ると、まるで風になったかのように、素晴らしいスピードが出た。 たちまち、追っ手を撒いて、かなり離れた場所に辿り着くと、空は少女を下ろした。 「ビックリした…」 「いや、僕も」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加