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二人は顔を見合わせて、少し微笑んだ。
「あなたは、魔法使い?」
「いや、ええーっと、僕もよく解らなくて…魔法なんて、使えないし…何て説明したら良いか…」
しどろもどろの空を見て、少女は笑った。
「悪い人じゃないってわかったし、いいよ、ありがとう!」
「先に助けてもらったのは、僕だし…」
「サイラがね。」
「あの人の名前、サイラっていうの?」
「そう。私はシャミィ。あなたは?」
「僕は、土岐島 空。」
「トキシマソラ?長い名前だね。」
「あ、えーと、空。」
シャミィはきょとんとした。
「ソラ。…急に短くなっちゃったね。」
そして、怪我をした左足を見下ろして、小さなため息をついた。
「だめだなぁ、私は。又、逃げるだけしか出来なくて…。いつもサイラの足手まといで…」
「あ、怪我。大丈夫?」
「平気。すぐ治るから、気にしないで。」
血の割には、怪我は浅い様だった。
空は、ハンカチでも無いかと、ジーンズの後ろポケットを探った。
出てきたのは、防水携帯だった。
「何?それ」
シャミィが覗き込んだ。
「これ?携帯って言うんだ。」
やはり、『圏外』だ。
「何に使うの?」
「え~と、例えば…」
空は、オルゴールの着信メロディをかけた。
オーバー・ザ・レインボー。
シャミィは驚きを隠せず、両手を口元に当てる。
「すごい!これは楽器?見たこと無い!」
それから、はしばみ色の大きな瞳を輝かせて喜んだ。
「サイラが好きそう!」
「あ、彼の事を忘れてた!大変だ!襲われていたんだよね!」
空が今逃げて来た方向を振り返ると、サイラが歩いて来るのが見えた。
「あの位なら、サイラは全然平気だと思うよ。」
シャミィがそう言いながら、サイラに手を振った。
「シャミィー!無事だったか!良かった。」
サイラは駆け寄り、ふっと、優しい表情を見せた。
「ソラがね、助けてくれて…すごかったんだから!
木を飛び越えて…風みたいに走って…私を抱いたまんま!」
サイラが、空に向かって一礼した。
「ありがとう、それと、失礼な態度を取って悪かった。」
イイエ、と言う風に、空は手を小さく振った。
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