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「ね、ね。ソラ。さっきの『ケータイ』を、サイラに見せてもいい?きっと、びっくりするよ。」
「ケータイ?」
サイラが訝しんだ。
ああ、いいけど…と携帯を鳴らすと、サイラは緑がかった灰色の瞳を見開き、顔色を変えた。
「こ、これは何だ?楽器か?初めて見る…。」
空は、どこまで説明して良いのか悩んだが、データフォルダを開いて、数々の写真を見せた。
これが僕の家族、住む家、友人…
ここじゃない世界…。
意外にも、サイラは真剣に空の話を聞いた。
途中で口出しする事もせず、
(シャミィはいちいち驚きの声をあげたが)
眉間に皺を寄せ、唇を軽く噛んだまま聞き入った。
空は、自分がこちらの世界に
「落ちて」
しまった経緯まで、一気に喋った。
理解されるとは思わなかったが、話さずにはいられなかったからだ。
ちんぷんかんぷんだ、と言う顔色のシャミィと対照的に、サイラは頷き、
「成程…。」
と呟いた。
「僕の話を、信じて…?」
「君は、シャミィを助けてくれた。だから信じる。正直言って、そんなに色が白くて女の様な君が、さっきの跳躍と素早さを持ち合わせていた事も驚きだった。何か…私達とは違うと感じていたからな。」
銀色の髪をかき上げて、ふう、と深く息を吐いた。
サイラの頭にも、銀色のリングがはめられていた。
シャミィのリングは凝った装飾が施され、小さな輝石で飾られた美しい物だが、彼のリングはごくシンプルだった。
一センチ位の細さで、ぐるりと古代文字の様なものが彫られている。
「仕方がない…君を上流まで送ろう。」
「え?」
「君が『落ちて』来た場所に、戻ってみるんだ。帰れるかも知れないだろう。…ただし、」
ここで、厳しい顔付きに戻った。
「私達は追われている。追っ手が来たら、別行動だ。君は自力で帰るんだ、いいな。」
はい、と返事半ばで、シャミィが、
「さすがサイラ!」
と叫んだ。
ぴょんぴょん跳びはねるシャミィを眺め、空は何かしら引っ掛かりを感じた。
(足…)
シャミィの足の傷が、見当たらない…。
(この二人は、何に追われているんだろう?)
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