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ここをジャングルだと感じたのは、その暑さのせいだった。
多分、40度は越えているだろう。
何しろ、太陽が二つあるのだから。
しかし、空は暑さをキツく感じなかった。
大体、彼はいつも寒がりで、真夏ですら汗をかかないのだ。
日にも焼けない。
(暑いって、こういう事なんだな。)
額の汗をぬぐって、太陽を見上げた。
「上流に辿り着く前に、もしかしたら日が落ちるかも知れない。」
サイラが言う。
「ソラが崖から落ちたとしたら…こちらにも崖があるのじゃないかと思うのだが…崖はまだまだ先だ。」
このサイラと言う青年、頭が良いと空は感じていた。
考え方が柔軟で、新しい事実を受け入れる事が出来る。
「辛くないか?この道は?」
「大丈夫です…多分…重力が違うんだと…」
「重力?」
「ああ、地面が…引っ張る強さだよ…。」
シャミィが眉をしかめた。
「…前にサイラがそんな話をしてたね…ちっとも分かんないよ。サイラの話は、いつもそう!太陽じゃなくて、私達の地面が回ってる、とか!」
「…それ、正解だよ。」
信じられない!とシャミィがお手上げポーズをとった。
サイラは、整った眉をピクリと動かした。
「ソラ!理解出来るのか?私の言いたいことが、分かると?」
「僕の世界では、そう習うんです。」
それからのサイラは、生き生きと自分の考えを話始めた。
宇宙の事、太陽が星だって事、地面が太陽の周りを回っている事、暑い地方と寒い地方の意味…。
語り始めたサイラは、少年の様に楽しそうな笑顔だった。
「ソラ、話が分かる人間がいて良かった。」
サイラは穏やかに微笑んだ。
この人達は、悪い人じゃない。
それだけは、空にも分かった。
不満げなシャミィが、あくびした。
「サイラー、暗くなって来たよー。」
ハッ、と我に帰ったサイラが、恥ずかしそうに頷いた。
「すまない、夢中になった…そうだな、暗くなる前に、休む場所を探そう。」
それから三人は、岩陰の草場に休む場所を決めた。
腰を下ろして伸びをすると、疲れがどっと押し寄せる。
(あぁ、みんな、心配しているだろうな…。)
両親と、弟、妹…友人達の顔が浮かんだ。
(もしかしたら、捜索隊が出てるのかな?…早く帰らないと…早く…)
いつの間に、空は眠りについていた。
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