届かない空

2/5
前へ
/55ページ
次へ
目が覚めると、真夜中だった。 すぐ側に、シャミィが寝息を立てている。 無邪気な子供の寝顔そのものだ。 妹の「海」が居るせいで、女の子の寝顔は見馴れている。 (この子は本当に、子供のまま育ったって感じだな。) 「ソラ、起きたのか?」 サイラが闇の中で囁く。 「うん、いつの間にか寝てしまって…、すみません。」 柔らかな声が返って来る。 「気にするな。それから、敬語は無しにしてくれないか?君とは対等だ。」 はい、と返事をした後、夜空を見て歓声をあげてしまった。 「凄い!」 満天の星空とは、当にこの空を示すのだろう。 濃紺の闇の中に、いつも見馴れた星が数倍の輝きをもって瞬いていた。 小さな星雲が幾つも浮かび、圧倒的な迫力で、空を黙らせた。 「ソラの国は、争いは無いのか?」 「え?」 「戦いなど経験してなさそうだ。」 「僕の国はね。今は平和だよ。でも、戦い続けている国もあるよ…。僕の国も、昔は戦い続けていたんだ。」 「そうか…。」 サイラは、長い指を組むと額に当てて、 「私達は王女を取り返しに行く途中だ。」 と、呻く様な声で言った。 「王女…?」 「アリア。…王女の名前だ。私達の国は、ダインと言う。王国 ダイン。アリアは、次期王位継承者だ。しかし、拐われた。」 「拐われた?」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加