届かない空

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「治す力…。」 「そうだ。シャミイの一族は、素晴らしい治癒能力を持っていた。 しかも、その力は他人をも癒した。 その力を、前バルゴ王に狙われたのだ。度重なる戦で、片足と片目を無くした前王は、シャミイの一族の者の足と目を自身に付けた。」 「ちょっと待って、それはつまり…。」 「それ以来前王は、臣下達や身内の者達が戦で体の一部を失う度に、シャミイの一族の誰かの体を切った。 シャミイはまだ幼い頃、アリアが国境付近の荒れ地で見つけた。 ぼろぼろで、死にかけていた。…多分、親が死に物狂いで逃がしたのだろう…。 アリアはそれ以来、シャミイを妹の様に可愛がった。 あのリングは、アリアが贈った物だ…額の烙印を隠す為に…。」 穏やかに眠るシャミイの額に、美しいリングが光る。 「烙印…。」 「バルゴの紋章だ。かなり薄くはなったが。」 空は、シャミイが無邪気な子供のまま成長した様な娘だと思っていた。 (僕はバカだ) ニコニコして、誰にも傷付けない様にしている人間は、本当は自分が傷付きたくないだけだって事位、自分が一番知っていた筈なのに…。 唇を噛み、心の中でシャミイに詫びる。 (ごめん。) サイラが、思い出した様に言う。 「この先にも、昔は魔法使い達の村があったんだ。 しかし、やはり狩られて…村の人々は屈せず闘い続けたんだが、攻撃魔法は殆ど持たない一族だったから…遂には皆殺しだったらしい。」 「殺してしまったら、意味が無いじゃないか!」 「ああそうだ。味方になって言う通りに働けば助ける、反抗するなら皆殺し…。当時の魔法使い狩りの常套句だ。だから、魔法使い達は一気に激減した。 先に住んでいたのは彼等なんだがな。」 ここで、シャミイが寝返りを打った為、サイラは黙った。 空は、何かしら引っ掛かりを感じていた。 魔法使い狩り。 川の上流。 「空から落ちてきた赤ん坊」 芋虫の様にしか動けない赤ん坊 日に焼けない寒がりな自分 色々な事が、次々と心の中で沸き上がる。 (…よく…考えるんだ…何故、僕はここに落ちた? たくさんの友達が崖から飛び降りたのに…何故、僕だけが?) (何故、僕だけが?) (それはきっと…) (僕がこの世界の人間だから…?)
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