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空は眠れなかった。
(僕は…この世界の人間…なんだ。14年前に、この世界からあっちの世界に落ちたんだ。
重力が違うせいで、赤ん坊だった僕は自由に動く事すら困難になったんだ。
この世界より小さな太陽しか無かったから、僕は日に焼けないし、いつも寒かった…。全ての説明がつく…。
この世界の赤ん坊は、オムツすら付けて無い可能性も高いし、毎日風呂にも入らないだろう…。
だとしたら…。)
(もしかしたら…)
(僕は、捨てられた訳じゃないかも知れない。)
それは、空の心を波立たせた。
今まで、自分の生い立ちを考え無い様に、考え無い様に生きて来た。
そして、考えなくても良い程に、父と母は優しく、暖かった。
しかし、もし実の親が『捨てたのではない』ならば、
(知りたい…何があったのか、僕は知りたい。)
夜が明けた。
サイラがほとんど寝ていないのは気配で分かった。
「ソラ、昨日は眠れなかったのか?まぁ、無理もないが…。あと、少し山道を行けば、川の上流に出る。もう少しだ。」
シャミィが、伸びをしつつ
「おはよー」
と、眠そうな声で言った。
「昨日は、いつの間にか寝ちゃった。サイラごめん。」
「気にするな。」
それから、空を見詰めて、
「ソラ、帰れると良いね…。大丈夫、きっと大丈夫だよ。」
と、屈託の無い笑顔を向けた。
意外にも、空はドキンとした。
(あれ?)
同情でもない
妹と同じ親しみとも違う
空はシャミィを、
『可愛い』
そう素直に感じ始めていた。
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