7.進藤家の土曜日

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「二人とも、若いですね」 「それはもちろん。五十年も前ですから」 瞬の口からは、自然と笑顔がこぼれた。 しかし、瞬は写真をみて一つ気になることがあった。 「高須さん、一つお聞きしてもいいですか?」 「なんでしょう」 「この写真の高須さんの右手はなぜ写ってないんです?」 不自然な点だった。写真に写る高須の右手が、ワイシャツの袖くちから見えていない。腕だけが垂れ下がっている。 「あぁ、気付かれましたか」 「何かあるんですか?」 「いえ、ないんですよ、右手が」 「えっ」 背筋がゾクリとして、瞬は固まってしまった。
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