7.進藤家の土曜日

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「よく自慢をされました。まだ白黒が主流の時代に、最新型のカラーで撮れるカメラだと。あの時は聞き流しましたが、確かに良いカメラです。こうして半世紀経っても仕事をこなしているのだから」 アルバムを見つめながら、高須は嬉しそうに語った。 「なるほどそうですか……啓二郎さんはよいお孫さんを持たれましたね」 「そんなことは――」 「いえ、カメラを通じ、強い意志が世代を越えて受け継がれる……美しいことです」 瞬は今まで、祖父の思いを継ぐとか、使命感にとらわれてカメラを構えてきたわけではない。ましてや、祖父に孝行らしいことができた記憶もなかった。 だから強い意思だか、美しいだかは言われてもわからない。 けれど、どこか誇らしい気持ちがするのは、気のせいではなかった。
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