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道中、私はずっと顔を伏せていた。
反抗しようにもできない悔しさと情けなさ、色んな意味で恥ずかしさで顔が火照るほど赤くなっていて顔をあげることができない。
私は男に抱き締められたり姫抱きされたことがない。
もちろん、初めてのことだ。
今まで人間に対して感情を露にしたことがなかった。
おそらく、鬼竜に出会ってからだろな…
感情をだすようになったのはつい最近のことで、あいつに言わせるとまだぎこちないらしい。
「お前、泣くこと知らねぇのか?」
あいつにそう言われたときは、全く理解できなかった。
泣くと言うことは自分の弱さを相手に知らせてしまう。
そのせいか、小さい頃に親に受けた体罰のせいか、それ以来泣かなくなった。
もっとも、この話もつい最近私の執事のケルベロスに聞いたんだけど…。
よく考えれば、普通は今が泣くときなんだろう…。
それでも私は泣かない。いや、泣けないのかもしれない。
本来なら、沖田さんや土方さんなんて一発で鎮められる筈なのに…。
暫く歩いただろうか、沖田さんが子供みたいに土方さんにおねだりを始めた。
「ねぇ、土方さん。少しお茶でも飲んでいかない?僕、疲れちゃった。」
「ん?それもそうだな。だが、飲んだらすぐ帰るぞ。」
「さすが土方さん。」
沖田さんは椅子に私を座らせ、羽織を脱いだ。
土方さんも羽織を脱いで私の横に座った。
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