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広間には私と土方さんが取り残された。
しばらくちょっと気まずい空気が漂っていた。
私はどうしていいかわからず、とりあえず会話のネタをさがしていた。
「つ…月、綺麗ですね…。」
「…あぁ。」
苦し紛れにでたことばがこれだった。しかも、口の中で声をはっしていた。
それでも聞こえたのか、土方さんは生返事。
そういえば…
ケルベロスは元気かな?
私の主治医のファウストとその助手兼私の使いのコイナス(ニンジン)は、相変わらず騒がしいんだろうな…
月をみるとなぜか、家にいる連中のことを想ってしまう。
「どうした?」
「あ…。いえ、月を見ると家の者を思い出すんです。」
「そうか…。」
何故か、土方さんの表情が寂しそう。
私はなんだか胸の奥がもやもやする…。
「…今日はもう遅い。明日から巡察に同行して、寺を探すといい。」
「はい。」
土方さんは私を部屋まで連れていってくれた。
布団を敷いて、すぐに横になった。
胸のもやもや感がいっそう酷くなる気がしたから…。
最近私はおかしい…?
私の中で何かが変わろうとしている…?
ため息をひとつついて眼を閉じた。
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