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こちらは、幹部方が集まっている広間。
近藤さん、土方さん、山南さんを中心に会議がすすめられていた。
皆、表情がつり上がっているところをみると、話の内容はあまり明るい話題ではないらしい。
「で、その長州と薩摩の連中が集まって話し合いを始めてる場所が、池田屋だって言いてぇのか?」
「はい。長州の連中出入りをしていると言う話を耳にしましたので。」
若干、ドスの利いた声で質問を投げ掛けたのは土方さん。
相変わらず、鬼副長らしいといえば鬼副長らしい。
その質問に怯みもせずに答えたのが、新撰組監察方の山崎丞さん。
監察というと、相手のところに悟られないように探りをいれたりする。
いわば、忍者と似たような類いの仕事を任されている人のことを指す。
山崎さんは、街の中を調べていたところ、長州(山口)と薩摩(鹿児島)の人たちが池田屋に入っていくのをみたと口々に話しているのを聞いたと言う。
山崎さんの横に座っている体のがっちりとした男も、それにつけ加えるように口をひらいた。体格の良い男は島田魁という。島田さんも山崎さんと同じく監察方である。
「それと副長。奴ら、何やら黒い刀を拾ったと言っていました。奇怪なことに重くて誰にも抜けなかったとも聞いています。」
「なんだと!?そんな刀があるはずねぇだろ?」
「とりあえず副長。我々の目で確かめた方がよいかと。それに、早いところ長州の連中を始末した方がよいと思います。」
皆が驚く中、斎藤さんだけは冷静だった。
的確な意見を述べ、周りを落ち着かせた。
この意見には皆が賛成した。
「それでは、行動するなら今夜が良いでしょう。周りの被害も小さくて済みます。」
「よし!では今夜行動を開始する!」
山南さんの言うことは最もである。
夜だと街の人たちは家に入り、床につく準備をいそいそとはじめるため、被害は最小限におさえることができる。
ただ、少し騒がしくなるが、斬り合いが勃発しているとわかれば、外には出てこないはずである。
近藤さんの一言に皆が頷き、会議は終わった。
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