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「トシ!そこまでだ。」
「龍崎くんも、落ち着きなさい。」
言い合いをしていた私たちを引き剥がすように止めたのは近藤さんと山南さんだった。
「近藤さん…」
「どうして…?」
私たちは二人の登場で、さっきまでの熱が一気に冷めてしまった。
二人は、さっきまでの言い合いを聞いていたのだろう。
このままでは埒があかないと判断し、止めに入ったに違いない。
ただ、局長と総長の行動は正しかった。
「このまま言い争っていても、解決はしないだろう。」
「その通りです。龍崎くん、土方くんの言う通り、危険な場所へいくのです。君を連れていくわけにはいきません。」
やはり山南さんも土方さんと同じ意見らしい。
女は家事だけをやれば、それでいいという考えなのだろうか。
私は悔しかった。
さらに悔しさの中にどこかもどかしさもあった。
だけど、そこは四聖獣の血を引く者。そうすんなりとは退かない。
「どうしてですか!私だって武器は使えます!」
「そうは言われてもなぁ…。」
「女性である貴女に危険なことに巻き込みたくないんですよ。わかってください。君の落とし物が向こうにあるなら、我々が取り返してきますから。」
「山南さんの言う通りだ。何度も言うがお前を命の張り合いに巻き込みたくねぇんだ。」
近藤さんと山南さんにも反対されては返す言葉を失ってしまった。
土方さんも、言い方を柔らかくして私をなだめた。
それでも私の中では、もどかしさが増していく一方で納得できなかった。
下を向いて悔しさを噛み締めることしかできなかった。
「すまねぇ…。今回は留守番しててくれ…」
ぽんっ
土方さんの手が私の頭をなでる。
が、私はその手を払いのけて暫く土方さんを睨んでいた。
そして何も言わず踵(きびす)を返した。
この時、私の目には大粒の涙がこぼれていた。
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