第1章場当たり的、その場しのぎ、手探りの介護

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「うん、わたしら、きょうだいやねん!」 2005/2/27(日) 午後 0:43 某月某日 デイケアで月曜日から土曜日迄、お世話になつている老人介護施設にて。わが母は現在、要介護度5である。来年度の介護認定の「取調べ」と母は言っておりますが、要するに、来年度の介護度のランクを決めるための、調査作業である。区の社会福祉の調査員(女性職員)と、本日主役の母(ご本人はもちろんお気づきではありません)と私の三人が、会議室に案内され、くだんの調査員の取調べが始まった。 「こんにちは、今日はよろしくお願いします。私は00と申します」と調査の職員さんが挨拶する。 「はい、こんにちは」と、母もペコリとお辞儀する。 「にいちゃん、どこのひとや~?」と、母が私を見る。 「うん、区役所の人や、お袋ちゃんに、聞きたいことがあるねんて」 「ふ~ん、はよしてちょだいね!」この表情は警戒している顔である。 「お名前は、なんと仰るんですか?」 「00ですけど」と、素っ気ない母。 「00さん、お年はおいくつですか?」 「う~ん、60ぐらいかな~?なっ、にいちゃん?」と、私には笑顔で答える。 「はい、分かりました」事前に母の事は調査済みだ。あっさりしたものである。 「00さん、ここは何処か分かりますか?」 「がっこうやーっ!」母は、日頃からデイケアに来ることを「学校に行く、と言っております」。 「はい、分かりました」 「00さん、お隣の方はどなたですか?」 「うん、にいちゃんやっ!」と、母は、ニコニコ顔で答える。 「00さんのお兄さんですか?」母に念を押す。 「うん、わたしら、きょうだいやねん」と、得意げな顔をする母。私は、50うん歳ですから、母が60歳くらいであれば、確かに兄弟姉妹と申しても、何ら不思議ではない。 うん、確かに、母の言っていることは、辻褄が合っている。私と母は兄弟だ。こうした、やりとりが延々小一時間ほど続き、今年も「取調べ」が無事終わった。
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