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体の限界が眠りに誘うまで 俺はひたすら彼を思いだしてた。 あんな近くに触れていたのに (空気のように) 確かさが見当たらない…。 刻み込めない。 日々は、 記憶は、 存在は、 この心に、 サワレナイほど深くに 息づいているのに。 熱を込めた視線は 俺の想いばかりに染められて あなたをきっと見ていなかった。 あれほど見つめていたのに あれほど近くにいたのに 抱きしめた体温さえ もう、ひとひらも残らない。 あなたに伝えなかった。 なんにも伝えなかった。 明日がくると思ってた。 未来があると思ってた。 当たり前だと思ってた。 そんな約束なんか この世には、ない。 そんなことも知らないで。 .
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