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真っ暗な海を見つめて、
潮風にべたつく髪を掻き上げた。
帰ろう。
重い足を引き擦りながら
俺は海に背を向けた。
海に行きたくないと言った
相田さんの気持ちがよく分かる。
ここで想いを叫んでも
あなたに届く訳じゃない。
いや、どこで叫んでも。
この世界にあなたは居ないから。
それは分かってる。
よく、分かってるんだ。
悲しいとか苦しいとか
それよりも心がもがくのは
―あなたは俺の想いを知らない―
そう、あなたは
俺の想いを知らないまま…。
「…あぁ…」
俺がもがくのは、
この愛の行き場の無さ。
どんなに想っても
伝わる術がないんだ。
「愛してる」
波の音が遠くに聞こえる。
「愛してる…」
愛してる。
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