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ピアノを弾く ぎこちない右手を思い出した。 でも恐ろしく覚えの早いあなたは 俺の手を見て鍵盤を覚えていた。 あなたの異常な記憶力が 興味のあるモノにしか 発揮されないのを 俺は良く知っている。 あなたの関心が、 鍵盤を踊る俺の指先に 向けられたのを知ったとき それは 俺の心に、焼ける熱を齎した。 焦げ付くほどの。 オレヲ、モット、ミテ…。 あの時、後ろから抱きしめて 愛を囁けたはずなのに。 俺のソロの曲をギターで弾いた。 あなたが何度も好きだと言った。 あなたは絶対に好きだと思った。 あなたの声を真似て歌う。 癖という癖がないから、 真似というよりは、歌声の 純度を上げていくみたいな。 一音一音、軌跡を辿れば 光を見つけ出せるかな? 海の底の青へ辿り着きたいんだ。 あなたの為に曲を作るから。 .
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