第一章~始まりの日

8/54
前へ
/217ページ
次へ
 翔は水を飲みながら胸を叩き、 「『二人で』ですか?」 「当たり前じゃないかい? 凛ちゃんは女の子だよ」  仰せの通り柴崎は女の子。それも郡を抜いた美少女だ。  しかし大丈夫か? こんな美少女と歩けるのは嬉しい。人生最大の幸運とも言える。だが気の強そうな柴崎のこと、きっと―― 「分かりました。住職様が心配でしたらそうしましょう」  柴崎は至って普通に、サラリと肯定してみせた。なんの躊躇いもないようだった。 「ほわっ!?」  見事に意表を突かれた翔は、素っ頓狂な声をあげる。  それに柴崎は何事かと目を細めているし、住職も訝しげな目で翔を見てくる。 「もしかして嫌なのかい?」 「いえ、まさか。喜んで柴崎さんとご一緒させてもらいます」 「よろしい」  住職は表情を険しいものから微笑みに変えると袈裟を整え、居間を出て行った。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

385人が本棚に入れています
本棚に追加