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薄暗闇の中、一人の少年が立っている。
先程から降り出した雨は強さを増し、少年の髪からは雫が滴る。少年の体は傷だらけだが、血は雨で洗い流されてしまった。
「くそっ」
少年が前髪を掻き上げ、見上げる先には一人の男。
「何故、お前はそこまで戦う? このまま続けると死ぬぞ」
その問いに少年は後ろを振り向く。
少年の後ろには胸の前で祈るように重ねている少女。
彼女の目が語っている。『死なないで』と。
少年は一度大きく頷いてみせ、男と再び相対し不敵に笑う。
「人を見下すアンタには分からないだろうさ。俺が命を賭してでも守る理由が」
少年はそう言い捨て、
「廻れ」
雨が地面を叩きつける中、風が吹き荒れる。
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