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「えー…この問題、微分するのでcos…」
教室に響く講師の声。
詩織の目線が、さっきから窓際の席に行く。
(なんで藤川いるんだろ…)
教室に来たとき、一目で分かった藤川…。イメージは前のまんまでうれしいような、残念なような…。
てゆうかなんでいるの…。
そればっか気になってたら、もう授業は終わり…。
気持ちを抑えながら帰る支度のふりをして、今気づいたみたいに藤川のほうへ行く。
「あ、藤川」
人のよさそうな彼が詩織を見る。
「しおる、しおるじゃん!久しぶり!会いたかったんだ」
中学のときのあだ名を連呼する。べつにいいけど。
「てか、藤川なんでここいんのよ?」
「あははーっ、ぼく前からここの予備校だったんだけど、クラスずっとBでさ。それが特Aになって今日からこのクラス。そっかあ、しおるはここの特Aだったんだあ」
ニコニコしながら何度も頷く藤川。
「やったじゃん藤川。国立も偏差値いいとこ行けるよ」
いつの間に詩織の声が弾んでる。
「うん、このままキープできればねw」
藤川はやっぱ前のイメージのままだった。
詩織の胸に、急に懐かしさと安心感が広がる。
「一緒に帰る?藤川」
普通に出た言葉。
「いこいこ!」
2人は雨の夜の中に出て行った。
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