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雨の夜、並んで歩く2人。
「しおるは最近なんかハマってるもんとかある?」
傘を時々くっつけながら、藤川がニッコリ歯を見せて笑う。
(なんだよそれ…)
「え、そーだなー、かわいい小物買うとか…藤川男だから分かんないと思うけど」
(聞いてどーすんだよ。話ムリに合わせようとしてるのかぁ)
藤川がちょっと困った顔してる。
「しおるはかなり女の子らしくなったみたいだね。前みたいに、ハマってる対戦ゲームの話したりとかないし」
(藤川…)
「それに…じつ言うとさっきしおるがクラスで声かけてくれたときさ、なんか女すぎてて、マジ緊張したんだ」
(ほう、うれしいこと言ってくれんじゃん)
「だから…♪着メロ…あ、北条。いま、うん。分かった。これからそこ通るから。はーい」
雨の夜、傘のなかでケータイを閉じる藤川。その何気ない横顔の表情…。
(ヤバい。なんか)
藤川の目がこっちを見て、またいつものお人好しな笑顔に戻る。
「だから、…うん。しおるが変わってたんで驚いた」
(こいつ、アタシに告白したいっぽいな)
すぐにコンビニが見えてきた。いつも入るなじみのお店。
(あ、…)
「やあ。北条」
さっきの電話の名前。
てかおんなの子だ…
「せいや先輩」
せ、せんぱい…?
「…」
「あー、この人は、中学の友達の吉田さん。予備校でクラス一緒になったんで帰ってきたんだ」
(…うんたしかにね)
「こんばんは」
(けっ、顔近くで見るとヘン。藤川こんなアホづらブスがタイプなのか。知らなかった)
傘の中から上目づかいに2人を見つめる子。
その容姿は、人が振り向くぐらいのかなりキレイ系だった。
雨の夜を、3つの傘が行く。
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