雨の日

4/8
前へ
/73ページ
次へ
雨の夜、並んで歩く2人。 「しおるは最近なんかハマってるもんとかある?」 傘を時々くっつけながら、藤川がニッコリ歯を見せて笑う。 (なんだよそれ…) 「え、そーだなー、かわいい小物買うとか…藤川男だから分かんないと思うけど」 (聞いてどーすんだよ。話ムリに合わせようとしてるのかぁ) 藤川がちょっと困った顔してる。 「しおるはかなり女の子らしくなったみたいだね。前みたいに、ハマってる対戦ゲームの話したりとかないし」 (藤川…) 「それに…じつ言うとさっきしおるがクラスで声かけてくれたときさ、なんか女すぎてて、マジ緊張したんだ」 (ほう、うれしいこと言ってくれんじゃん) 「だから…♪着メロ…あ、北条。いま、うん。分かった。これからそこ通るから。はーい」 雨の夜、傘のなかでケータイを閉じる藤川。その何気ない横顔の表情…。 (ヤバい。なんか) 藤川の目がこっちを見て、またいつものお人好しな笑顔に戻る。 「だから、…うん。しおるが変わってたんで驚いた」 (こいつ、アタシに告白したいっぽいな) すぐにコンビニが見えてきた。いつも入るなじみのお店。 (あ、…) 「やあ。北条」 さっきの電話の名前。 てかおんなの子だ… 「せいや先輩」 せ、せんぱい…? 「…」 「あー、この人は、中学の友達の吉田さん。予備校でクラス一緒になったんで帰ってきたんだ」 (…うんたしかにね) 「こんばんは」 (けっ、顔近くで見るとヘン。藤川こんなアホづらブスがタイプなのか。知らなかった) 傘の中から上目づかいに2人を見つめる子。 その容姿は、人が振り向くぐらいのかなりキレイ系だった。 雨の夜を、3つの傘が行く。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加