濡れたレンズ

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「ほら、もっとくっついて」 少女の浮かない顔に、雨のしずくが付いて垂れる。 「もっと。じゃ撮るよ~ん。はーい!」 ケータイのレンズが、雨の町に立つ少女たちを映す。 車の音。たくさんの通行人の音。音楽……。 「記念だよこれー。天気はイマイチだけどやっぱ来て良かったね!」 少女に親友が笑いかける。 「うん」 テンションが上がらない。 「はい赤外線。あれー、もっと楽しまなきゃー。せっかく来たんだから」 少女が差した傘が、親友の子に少し当たる。 「あ、入れてくれんの、ありがと~。…まだそんな顔しちゃって。このぉ、このこの!」 親友がいきなりくすぐってくる。 「や、やめてよー」 思わず笑顔になる少女。 2人の周りをなんとなくよけていく人たち。 「ほら詩織。みんなアタシたちのことよけてるじゃん。詩織がヨワいから引いてるでしょー」 親友の「きよら」が傘の中でつぶらな目を細めた。 フフ 「元気出た?」
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