24人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
「ほら、もっとくっついて」
少女の浮かない顔に、雨のしずくが付いて垂れる。
「もっと。じゃ撮るよ~ん。はーい!」
ケータイのレンズが、雨の町に立つ少女たちを映す。
車の音。たくさんの通行人の音。音楽……。
「記念だよこれー。天気はイマイチだけどやっぱ来て良かったね!」
少女に親友が笑いかける。
「うん」
テンションが上がらない。
「はい赤外線。あれー、もっと楽しまなきゃー。せっかく来たんだから」
少女が差した傘が、親友の子に少し当たる。
「あ、入れてくれんの、ありがと~。…まだそんな顔しちゃって。このぉ、このこの!」
親友がいきなりくすぐってくる。
「や、やめてよー」
思わず笑顔になる少女。
2人の周りをなんとなくよけていく人たち。
「ほら詩織。みんなアタシたちのことよけてるじゃん。詩織がヨワいから引いてるでしょー」
親友の「きよら」が傘の中でつぶらな目を細めた。
フフ
「元気出た?」
最初のコメントを投稿しよう!