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目の前には俺が立っていた。
学校の制服や鞄、髪型、履き過ぎて擦れた革靴も自分そっくりだ。
目の前の俺は薄気味悪い笑みを浮かべながらこちらを見ている。
気が狂いそうになるというのはこの事だろう。
頭も痛くなってきた。
と、目の前の俺は口を開いてなにか言葉を発した。
聞き取れなかったが、明らかに人間の声ではなかった。
口を僅かしか動かしていないのにも関わらず、なぜか耳元で囁かれたかのように聞こえた。
(…!?)
気を失った。
ふと起き上がる。
病院のベッドの上にいる。
「あなた、目を覚ましたわ!」
母親の声だ。
「本当か!
おい大丈夫か、心配したんだぞ!」
父親の声。
俺は家の前で倒れていたところをたまたま通り掛かった近所のお年寄りに発見され、病院に運ばれた。
回りには誰もいなかったらしい。
どうしてか、救急車の中ではうわ言のように両親の名を呼びながらうなされていたという。
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