ミニチュア・ガーデン

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妹は青い海の底で生きる人魚なのです。  妹の名前は「蓮華」といいます。生まれた日に、庭にたくさんのレンゲの花が咲き乱れていたからこの名前をつけたのだ、と父が少し照れたように語ってくれたことがありました。厳しいけれど頼りがいのある父と、穏やかで優しい母、そして可愛らしい妹。私はこの家族の下に生まれてきてよかったと心から思います。 けれども、そんな幸せが少しずつ崩れはじめました。それは蓮華に恋人が出来たためでした。私は彼女が幸せならばいいと思っていましたが、両親は許しませんでした。蓮華には小さいころから決められた婚約者がいたのです。どういう経緯があって決められた人だったのか、私は知りません。ただ、私は婚約者よりも蓮華の選んだ男性の方が彼女にふさわしいと感じました。父と母に話すと当然怒られますので、蓮華は私にだけ彼の話をしてくれます。今日はいつもよりも長く話をしたとか、今度一緒に出かけようと約束したのだとか、彼のことを話す蓮華はいつも幸せそうでした。ところがある日のことでした。
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