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大都市の中心街。
『首都』と呼ばれるその街のとあるファミリーレストランに、漆黒のコートを纏う男の姿があった。
彼の名は『永友 永作(ながとも えいさ)』年齢二十四。
彼は、通りの見下ろせる一面ガラス張りの席で、ステーキに舌鼓を打っていた。
ファミリーレストラン内には他にも客はおり、その大半は、時間帯によるものであろう家族連れが占めていた。
「ねぇ」
女性の声が永作を呼ぶが、永作は構わず、ガラス越しの通りを見下ろす。
「……お兄ちゃん」
再び声がするが、男は又しても無視する。
通りには針葉樹が植えられているが、今の季節、葉は枯れ落ち、裸の幹をさらけ出している。
そしてその下では、清掃員が忙しそうに落ち葉を掃いている。
「……兄貴」
三度目。
その声で永作は、初めて自らの正面にいる人物を見る。
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