序章

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平日の昼下がり。 大都市の中心街は、昼休みを利用したサラリーマンや、学生等でごった返していた。 「――はぁはぁッ、はぁはぁ」 日の光の届かない、ビルとビルの谷間にある裏路地。 「――はぁ、……くそっ!!」 悪臭漂うその通路を、一人の男が駆ける。 年齢は、四十代後半か。 やつれた顔や、しばらく剃っていなさそうな髭のせいか、実際よりも老けている様に見える。 「――はぁはぁ……いつまで追って来るんだッ!!」 男は振り返る。 その視線の先には、漆黒のコートを纏った人影。 顔は、フードを深く被っているため、詳しくは分からないが、年齢はまだ若そうだ。 先程から人影は、男と一定の距離を保ったまま追って来ている。 追い付かれれば、待っているのは、『死』のみ。 しかし、男には策があった。 それは、裏路地から『外』に出る事だ。
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