序章

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「神技(じんぎ)」 コートの人影が呟く。 男の体から、無数の刺が『内側』から生える。 ――悲鳴は無かった。 響いたのは、人肉を裂く音のみ。 男は何も言えず、腕から、足から、頬から、口から……。 至る所から、大きさの異なる真っ赤な刺を生やし、遠目からは、まるで赤いオブジェの様になる。 驚愕。いや、人間の表情かさえも分からない、崩れた表情のまま絶命した男。 彼の表情を見た者は、しばらく動けなくなる。 それほど残忍な表情だったのだ。 しかし人影は、それを一瞥すると、つまらなそうに言葉を吐く。 「……つまんね」 コートの人影は、男から溢れ出す血を踏み付けながら、来た道を戻る。 あたかも、まるで始めから何事も無かったかの様に――。
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