願望

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ハナちゃんはいきり立つ。 「知らないよ~。ホストなんか行かないもん。 ハナちゃんは行ったことあるの?」 ハナちゃんはちょっと照れた素振りをする。 「………………一度ね。 でも『ラブイズ』のナンバーワンって、『ナイナビ』にも載ってるし! 彼の写真もあったよ!」 …………明らかに一度行っただけではない感じだ。 『ナイナビ』と言うのは『ナイトナビ』という、スナック、キャバクラ、ホストの案内雑誌の様なものだ。 それだけに『ナイナビ』に載るホスト、ホステスは顔もナンバーワンでなくてはいけない。 「でもあの人が『ナイナビ』載るのも解るなぁ~。 あんなのに告られたら即OKしちゃうもん……。」 ルイちゃんがそう言うとハナちゃんも嬉しそうに、うんうんと頷く。 「………ふ~ん………。 そんなもんかしら………。」 私には理解しがたかった。 だってホストだよ!? と言いたい気持ちはあったものの、何だか楽しい妄想をしている2人を邪魔するのが申し訳なく思えた。 「…………なんか私が悩んでそうな顔をしてたみたいだから………。 ………そんな私を放っておけなくて場内入れたみたいだよ。」 ルイちゃんとハナちゃんは顔がパァッと明るくなっていくのが、手に取るように解る。 「じゃあ私もしよっ! …………こう?」 「それじゃウミガメの産卵って顔だよ! ……………こんな感じ?」 「うわぁ~……… 超ブス。」 「こう?」 「いや、こう?」 2人は閉店までそのにらめっこを続けていた。 私は傍ら、大爆笑だった。 タイジ…………………。 悪い人じゃない……………かな………。 私の話も真剣に聞いてくれたし、真面目にアドバイスもしてくれた。 ホストだから……………………… っていう偏見も良くないよね。きっと。 私も好きでこの仕事を始めた訳じゃないし、………タイジも何らかの事情で今の仕事をしているのかも。 別に恋愛としてじゃなくて、水商売の先輩として色々教えてくれるかも知れない。 ましてや人気ナンバーワンの店のナンバーワンホストだから、色々知ってるはず。 ……………………… メールしてみようかな…………。 (人間って不思議なものだ。 何かで成功している人に対して、あまり疑問も持たず、何かを学ぼうと信頼してしまう。 それが最悪な結果を産もうとは知らずに……。)
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