願望

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一定の通院、一定の薬で治ると事細かに説明を受け、私は病院を後にした。 何だか放心状態にいたので、あまり話は聞いていなかったもののとりあえず生活の仕方等のパンフレットを受け取り、よく読んでいた。 そのパンフレットの内容と男の話からすると普段の生活にはあまり支障が出ないようだ。 それだけは理解したので、ある程度は前向きにいられる気がした。 気がした…………。 …………………。 ……………。 私はこんな事で落ち込まない……。 自分に精一杯言い聞かせる。 たかだか病気くらいで何だって言うのよ。 治るって医者が………力説してるんだから治るのよ!? …………そして。 お腹にそっと手を当てる。 ………………無事……………産むことだって…… 出来るんだから………。 問題は通院、出産に掛かる費用。 通院って言っても、月に一万~二万の費用だから何とかやっていける! 出産に掛かる費用も………… 何とかしていく。 私一人で何とか……………しなくちゃ! ふと携帯電話が鳴る。 新着メール………。 from タイジ sb どう? 本文 今日病院だったろ? どうだった? ………END……… 私は機械的にメールを打ち込む。 to タイジ sb Re: 本文 別に何もない。 ………END……… …………このタイジという男。 言うなれば………水商売……。 まぁ、ホストだ。 はっきり言って……………… 元凶。 散々、私を利用している。 別に客として使っている訳でもない。 ……………私を金づるにしている男。 ホストと言うのは世間一般から見て、収入が良さそうなイメージに見られるだろうが、実際の所は普通の生活で一杯だそうだ。 しかし、人より良い物を身に付けていたいという欲。 人よりモテて、いい生活をしていたいという欲。 私はその欲を叶えて上げられる収入があった。 タイジはその欲を叶えんと私に言い寄って来たのだ。 ……………弱り切った人間とは、誰かにすがりたいもの。 誰かに支えて貰いたいもの。 その心の隙を見事に着かれたのだ。 騙されたという気持ちはさらさらない。 私も水商売をしているから解るから………。 しかし…………私の考えと唯一違うのは…………。 人を人として扱わず、道具の様に人を扱う。
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